2008 | Big Leaf

■ 植草学園大学 “ プロポーザルコンペ”  最優秀賞

■ 日本建築家協会 “ 優秀建築選2009”  優秀建築選選定

■ 千葉市 “ 第21 回千葉市優秀建築賞”  優秀建築賞

学校法人植草学園は100余年にわたる歴史を有し、ビッグリーフ(L棟)は新たに“ 医療・福祉・教育の連携” を目指した新設大学構想の

メイン施設に位置する。

キャンパス主要アプローチ基軸と斜交する南北軸に各ボリュームを配置。

内部構成はアクティビティーを高めた“ 開かれた教育空間” を提案。植草を表象する中枢センターリーフの全断面に挿入した『アカデミズムの階段』

は“学問の高みへと登る” 姿勢を空間的隠喩とし表現した。

□ 大学設立の経緯とキャンパス

計画の基本理念

学校法人植草学園は1904 年( 明治37 年) に千葉和洋洋裁女学校として開学した。以来、100年以上にわたる学校運営の歴史を経て、2003 年に

医療・福祉・教育の連携と統合を目ざした新設大学構想が立案されることになった。“ 徳育を教育の根幹とする” 建学の精神と“ 大学は

社会のものである”という基本理念に沿った“ 学校づくり” を目ざし、基本構想では学内教職員、及び医療・福祉・教育・建築等の学外有識者委員会が

組織され、発達教育学部( 発達支援教育学科) と保険医療学部( 理学療法学科) の二学部を有する新設大学開設に向けた準備が進められた。

キャンパス計画では建学の精神に立脚し、社会と共存・共生する施設環境と運営を目ざして、2005 年、プロポーザルによる総合計画の策定が行なわれた。大学を取り巻く環境が多様化・個性化・個別化する中、設計段階においては特に交流・共同学習・学校開放・地域連携の進展に寄与し得るキャンパス環境

機能を具現化することをテーマに掲げ、植草学園短期大学(2007 年度文部科学省特色GPに選定)と共存する形で、2008 年4 月、植草学園大学

キャンパスがオープンした。

学校法人植草学園は100余年にわたる歴史を有し、ビッグリーフ(L棟)は新たに“ 医療・福祉・教育の連携” を目指した新設大学構想のメイン施設に

位置する。キャンパス主要アプローチ基軸と斜交する南北軸に各ボリュームを配置。内部構成はアクティビティーを高めた“ 開かれた教育空間” を提案。

植草を表象する中枢センターリーフの全断面に挿入した『アカデミズムの階段』は“ 学問の高みへと登る” 姿勢を空間的隠喩とし表現した。

□ 計画・設計趣旨

○新大学棟の構成・配置: 大学棟(通称:ビッグリーフ)の構成は、将来的な学部学科の再編に対応可能とするため、

 開設2学部の必要諸室、福利厚生、大学本部機能を共存配置させる計画とした。

 大学棟の配置は短大との連携性、分かりやすいアプローチ動線、新設大学としての象徴性、敷地の有効利用と将来計画等を考慮し、短大棟東側部分に

 配置した。

 大学棟中心部(センターリーフ)は各部門を繋ぐ中心的機能であり、「植草」を表象する形態となっている。

 センターリーフと斜交する二つのウイングには講義室・演習室・実習室・研究室、大学本部機能、福利厚生機能が配置されている。

 大学棟への主動線はGLから上下二つのスロープで1階アカデミックコモン、2階コンコースにそれぞれアプローチし、2階からは大階段を介して

 3階オープンデッキ、4階研究室ゾーンにアクセスする。

 なお、このメインアプローチはアカデミズムの階段、すなわち“ 学問の高みへと登る” 姿勢を空間的隠喩として表現したものである。

 

○キャンパスアクティビティーの創出: 開かれた学習空間の実現と、人の移動・滞留・学習そのものが大学のシンボル・デザインになることを

 意図して、大学棟の内部空間には3層吹抜けモール円形シースルーELV、透過性の高いガラスパーティション等を計画した。

 センターモール・カフェ・テラスは可動間仕切で分節・連続可能であり、中庭の3on3コート・既存短大テラス・学食とは視覚的・機能的な連続性が

 確保されている。

 

○キャンパスブランドとしてのアカデミックコモン: キャンパスの賑わい・交流、生活空間としての位置づけを図るため、センターリーフ1Fには

 レストランショップ・カフェ、表現スタジオ、音楽スタジオ、ドロップインラウンジ、センターモール、タッチダウンコーナーを配置している。

 また親水空間として中庭に水盤の設置、ガラス窓面の流水とせせらぎの演出等を行っている。

 

○バリアフリーからユニバーサルへ: メインスロープは1/15、点字対応の階段手摺、館内案内・床点字ブロックによる注意喚起・誘導、

 ゾーン・カテゴリー別カラースキーム、弱視者や色覚障害者に配慮したポジショニング・視認性を高めたサイン計画等を導入した。

 また、ガラス手摺・ミラー・窓高さについては、車椅子使用者,着席者,立位歩行困難者から健常者まで、幅広い利用者に対応可能な

 各部寸法・仕様を検討、設定した。

 

○構造計画と安心安全システム: 防災拠点を想定した耐震上の保有水平耐力はX 方向=1.43,Y方向=1.45 で、100 年レベル大地震動でも

 継続使用可能、人命の安全確保に加えて機能確保が図れる性能をもたせている。

 また、ノンシック性能をVOC測定評価で確認すると共に、IT を含めたセキュリティー・各種防災設備で囲繞した。

 なお、視覚的に開かれた空間構成は、共存共生の共通認識の基でさらなる安全領域を形成することとなる。

 

○省エネ・環境設備計画: 配置上の微気象に加え、外壁面に高断熱性複合耐火パネル・熱線吸収,熱線反射ガラス・全熱交換換気等を採用し、

 ペリメータゾーンの空調負荷の低減を図った。照明計画ではトップライト・ライトシェルフを用いて館内全般照度を高め基準机上照度700lx を

 確保しながら、各所に人感センサー・ソーラータイマー・高効率LED等を配した。

 また、給水源は上水・井水のW配管とし、貯留雨水を用いたレストラン窓面のウォーターフォール(水流)は視覚的効果に加えて散水冷却効果による

 夏期冷房負荷の低減を意図している。

 ここでの雨水循環エネルギーは屋上太陽光パネル発電を利用しており、目に見えるエコ学習教材としての役割を期待している。

 

[協働:東海大学 山﨑俊裕 研究室]

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