2006 | KAIHIN-A.M.C.

■ 海浜動物医療センター “ 指名コンペ”   最優秀賞

■ 日本建築家協会 “ 優秀建築選2007”   優秀建築選選定

■ 千葉県 “ 第14 回千葉県建築文化賞”   建築文化奨励賞

メインコンセプト

動物病院を開院して30 年。少子高齢社会における“家族の一員” としてのペット共生時代の中“今後ますます高まる様々なニーズや

高度化する獣医療に対応できる総合的な動物医療施設をつくり、更には、全ての動物に係る文化に関し欧米先進国に優る国際的文化水準を

日本で構築していきたい” という院長の篤い思いを具現化。国際レベルの高度医療体制のみならず、教育・関連サービスを含む、

提案型の国内最大級の規模と性能を擁する Progressive ( 進歩的) な総合動物医療施設を千葉県から全国へ発信。

○景観の配慮

こじま公園通りに面するメインアプローチ側ファサードは、“ 第3期美浜区区民懇話会環境分科会” からの提言(画一的な剪定でない固有の

自然樹形を望み、「樹木への思いやりを大切に…」)を尊重。

歩道境界から≒6m セットバックすることにより本ファサードが“並木” のハザード(hazard) とならない配置を選択。

同時に“ バス停留所のパティオ” や“ 小さな緑とサイン”或いは“両腕をひろげペットと飼主を迎え入れるファサードへのライトアップ”等が

地域のシンボルとなり周辺景観形成に寄与することを大切な課題の一つとしてデザインした。

 

○ユニバーサルデザインの配慮

この施設に訪れる全年代層の飼主と家族の一員( ペット) は大型・小型種に拘わらず、雨に濡れない駐車場からエントランス正面のELVへ

バリアフリーで導入。

待合・診察室から診療が見通せる処置室内も各検査室にガラスを多用し飼主の不安を払拭。また診療後もペット専用ダムウェーターや

カウンターでの引渡まで明快な動線で負担が少ないアプローチを計画。

視認性の高いサイン計画は解かり易さをコンセプトとし、TFT画面での情報提供、また、五感が敏感なペットにとっても

ノンスリップ材・吸臭, 吸湿壁塗料・抗菌素材・吸音, 可聴域音源機器の配慮・消音チャンバー全換気, 空調システム等を採用。

また、開かれた医療・サービスの一貫として24 箇所にweb カメラを設置。駐車場・待合の混み具合から診察・手術・入院・宿泊等の様子を

飼主へ配信する等、二者( 飼主&ペット) 共々 公平・安全・安心・快適に利用できる性能を前提として計画されている。

□ プログラム program

Ⅰ.医 療:望まれる最高の獣医療の提供

・地域密着型の“ 身近な核” としての第一次診療を主軸に、慢性期・二次診療・急性期にも対応し、

 いち早くインフォ-ムドコンセントや終末医療のコンサルケア等も施行。

・開かれた医療を確立し、高度医療・常時対応(24 時間,365 日診療= 準備中)・救急対応・医療相談

 予防診療を行う。また、セカンドオピニオンや専門医コミュ-ンのネットワ-クを構築。

・飼主の望みを理解し、満足していただける心身両面[プライマリ-&メンタルケア] の最高の

 獣医療を提供。

 

Ⅱ.教 育 :適切な指導と教育の実践

・ペットと飼主のレベルに合わせながら、一つ上のレベルに導いていくための指導と教育を行う。

・その他、インターン・獣医学生・テクニシャン・グリーミングスタッフ等専門家を含め

 全般教育の場を提供。

・講師宿泊施設等を用意し、国内トップレベルの専門医からなる研究会・講習会を定期開催。

 

Ⅲ.奉 仕 :心に視点を合わせたサービスの提供

・CS を共有する為、手術見学室・ウェブカメラによるライブ放映( 治療, 手術, ICU, 入院等) 等、

 開かれた医療を実践。

・飼主の視点に立ち、各種相談やQ&A 等 飼主が知りたいこと、必要となる正しい知識や情報を発信。

・ショップ・トリミング・パドック併設ペットホテル等ペットと飼主が喜んでいただける最高の

 サービスを提供。

左1: 受付

左2: 待合

左3: 大待合

左4: セミナールーム

右1: 処置室

右2: 画像診断室

右3: 第1手術室

右4: 診察室

右5: 犬猫入院室

□ デザイニング designninng

1.設計主旨

 単なる動物の総合病院でなく、獣医療を核とした3つのプログラムは、機能的に極めて複雑な係わり合いをもっている。

 それを来館者に対しては如何にシンプルに利用して頂けるかが“ 配慮” でなければならない。

2.社会性

 建築的に環境配慮・ノンシック・ハートビルは当然の性能であるが、本プロジェクトに内包されたプログラムは、社会的に有用であることの

 具体的な有様を提案し、一地方都市から国内全域に波及していくことが 日本の獣医療に纏わる進化の礎となり社会資産となる手だてと考える。

3.計画地特性と外観

 西側22m メインアプローチ( 第1種住居地域) と東側13m サービスアプローチ( 商業地域) を有する本計画地は、法規制( 日影・高度斜線) に

 リンクしながら、敢えて2つの表情をもつファサードとした。凹面のメインサイドは、多くの命を受け入れる“ 身近な核” という理念をフォルム化し、

 ソリッドなサービスサイドは、低・中・高層の開口部に変化をもたせることで、矩形ボリュームの圧迫感を緩和した。

4.ゾーニングと内部計画

 主動線はメインとサービスのコアを両サイドに配置し利用者とスタッフの明確な動線分離を図る。

 利用者は目的に添い各階層にシンプルにアプローチする。

 一次診療の受診者は待合から15の診察室へ緊急度,種別,サイズ等により案内後、視認の容易なサインに導かれ、動線量により

 雁行する中待合へと移動する。

 また、手術, 入院・セミナー・トリミング等は階層毎のゾーニングとなっている。

 インフォ-ムドコンセントのみらなず開かれた医療の建築的手続きは、多画面ディスプレイ,待合, 診察室から処置の見通し,

 手術見学室等の処理を行った。

 密度の高い診察処置エリアは、約30 名の獣医師,看護師が診療行為を円滑に実行する為、動線は極めて合理的な計画とし、ドクターライブラリー、

 ICU 等はガラス間仕切りを多用し随時の視認性をひろげ、一部入院室は処置室との通過動線に設置知することで、全スタッフケアにあたることを

 可能にしている。

 使用マテリアルは、抗菌等衛生仕様は基より、防滑・防臭・防音・調光等動物の五感に配慮した素材で構成。

 飼主への安心・健康的なイメージメイクとスタッフによるメンテナンスを考慮し適材適所の選択を心がけた。

5.構造設計概要

 鉄筋コンクリート構造5 階建。計算ルート3大地震時(震度6 強~震度7 で100 年に1回あるかないかの大地震)の保有水平耐力

 X 方向 : 161% ~ 193%

 ∴ 基準に対し、平均1.54 倍の安全率。

 Y 方向 : 113% ~ 146%

 ∴ 基準に対し、平均1.29 倍の安全率。

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